音MADユニバースについて、演劇やってたユビュと音MAD有識者の方(演劇やってない)と話したので、その内容をまとめました。音MADユニバースにおけるリアリズムについての話が多いです。

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有識者
私が有識者です。
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ユビュ
ユビュです。演劇を過去にやっていました。

有識者
最近の音MADユニバースの研究については、ワンパターン化に対する過剰な危惧って感じがしますね。
ただ、定型化って簡単に逆張りができるから実は結構楽な環境ではあるんですよね。

ユビュ
たとえば、不条理音MADユニバースつくるとか、ゴドーを待つ感じの。いまの音MADユニバースはどちらかといえば、ストーリーが情熱的というか、壮大でしっかりしていて古代のギリシア演劇やシェイクスピア演劇に通じるものを感じますので。

※『ゴドーを待ちながら』はベケットによる不条理演劇の代表的作品。ゴドーを二人が待つがゴドーはやってこない。詳細はググってください。自分も音MAD風味つくりました

有識者
いいですね。

ユビュ
音MADの文脈だとリアリズムにはどうしても限界がありますから・・。

※リアリズム演劇はリアルな演劇、これについて話が広がりました。

有識者
自動記述音MADとかは?

※自動記述とは超現実主義(シュルレアリスム)の芸術家が実行した技法。詳細はググって。

ユビュ
超晒しのお題が「超」だったんで、自動記述で音MADつくれないかは考えたんですが難しいよっぽどうまくないと聞ける音MADにならない・・

有識者
考える暇なく素材をreaperに配置していく。

ユビュ
それでまともに聞ける音MADになる可能性はあるんですかね(疑問)。
泥酔状態でつくるとかはありかも。

有識者
シラフに戻ったら、それを再解釈して字幕に起こす。ユニバース完成。

ユビュ
ああ、ユニバースのストーリーを自動記述するのはありですね。それこそ『ナジャ』的な音MADになるかも。

※『ナジャ』は超現実主義の作家アンドレ・ブルトンの代表作、明日のナージャの名前の元ネタ。自動記述で書かれた小説で、小説のなかに詩や絵が唐突に挟まったり、とりとめのない感じの文章が特徴。

このへんはハワイさんの日記MADが近いかも。

有識者
あぁ確かに。

ユビュ
自分は演劇の知識しかないけども、結局ユニバースはお話をつくることだから、そのへんの内容は輸入できますね。
そういえば雑アダンのときもミステリーの技法を使ったユニバースみたいな話も出ていたような。

演劇といえば、ブレヒト的にさきにストーリーの結末を伝えて異化してもよいブレヒトは最近だと100ワニの手法ですね。

※ブレヒトとか異化効果はググってください。簡単にいうと最初にネタバレすることで、ストーリーをみながら観客に色々と考えさせる技法です。

有識者
昔だったら音声+映像の2要素だけだったけど、今は音声+映像+字幕の3要素って感じで、割と色々実験は出来ますよね。全ての要素でズラすっていう方向もあるわけだし。

ユニバースをテロップ芸の一種と見てもいいので、テロップでツッコミとかは可能ですよね、お笑いによくあるようなまぁすでにあるだろうけど。

ユビュ
BB劇場に対してユニバースはオペラだったり、ミュージカル的かな正直、音合わせしかしてない音声にはストーリー性は皆無だけども、音楽があることが効果になっているというか勢いでいろいろなものが許容されている感はありますね。日本だと劇団四季に近いような気も・・。

でも、音声+動画+字幕という3要素をしっかりまとめてユニバースさせるのは難しですよね。音声の台詞と字幕がともに複雑だった場合は、読み手は確実に混乱しますから。

この前のナージャMADも、最初はユニバース化して、ひたすらブルトンの『ナジャ』のストーリーだったり、詩だったりを字幕で入れてたんですが、最終的にわけがわからなくなって字幕ぜんぶ消しましたから。慣れ親しんだ素材でないと、情報量の氾濫は視聴者のキャパシティを超えてしまう恐れがある。

有識者
平田オリザリスペクトしないと。

※平田オリザは静かな演劇(台詞が同時多発的だったり、観客に背中向いて台詞しゃべったり、ボソボソしゃべったり)が特徴で日本におけるポストモダン演劇の旗手の1人。日本的なリアリズム演劇(リアルな演劇)を生み出したと言われている。

ユビュ
オリザといえば静かなユニバースですか?

有識者
はい。ゆっくりな曲にすることで成立させにいくっていうのはありですよね。

ユビュ
オリザは日本的リアリズムなんですよね。つまり音MAD的リアリズムと考えると・・よくわからないなあ。ネットスラングというかインターネットが世界が静かではないから・

あーでもオリザ演劇の特徴から考えたんですが、状況を台詞で説明しないというところになるわ。地球に滅ぼそうとしてる状況があるって説明しなくて、台詞のニュアンスでそれ(地球が滅びそう)を伝える。

説明台詞のかわりに登場人物のなにげない台詞で説明させるのはリアリズムの基本ですね。このへんはオリザといわず、チェーホフやらイプセンもそんな感じかも。

※チェーホフやイプセンは海外のリアリズム演劇の巨頭、どちらも100年以上前の人。

有識者
音MADでそれをやるのは難しそうですね。元素材がそういうので、そのままなぞるとかしない限り。

ユビュ
音MADでは難しそうですね。そもそも世界を滅ぼすやつに立ち向かう英雄を描かずに、そのときに街でくらす家族を描くのがオリザというかリアリズムというか

そうなると世界が滅びそうな文脈でゆゆ式キャラを使うとか、あくまでも日常という感じで。このあたりでリアリズムユニバースになりませんかね?キャラクターのなにげない台詞から滅びを感じさせる的な

有識者
それだと最後を爆発オチにすると逆に活きてきますよね、安直じゃなくて。

ユビュ
たしかにそれはしんみりしますね。

有識者
ただこういったリアリズムを目指す場合、下手にセリフを人力で改変するとよほど上手くない限り興醒めして成立しなさそうだから、上手くオリジナルのセリフを活かすだけの構成力が必要そう。

ユビュ
でしょうねリアリズムだと字幕で補うのにも限界あるというか興ざめするというか。いろんなアニメのキャラ出すのはありだとは思うんで、うまく構成する能力が問われるでしょうね。

有識者
上のゆゆ式云々の例だと、「世界滅亡まであと3日」みたいな補助線としての字幕を出すとか。

ユビュ
それだとリアリズムじゃなくてブレヒトになりません?まんま100ワニに・・。

有識者
確かに…。難しいですね。

ユビュ
演劇だと数十分の内容を音MADだと数分みたいな。そういう時間制限もありますから、なお難しい。

オリザの東京ノートは戦争が背景にありますが、このあたりであれば、まあ映像で表現しやすいかなと。

有識者
視聴者をどれだけ信頼するかに掛かりそう。

ユビュ
リアリズムは基本的に観客を信頼しますよ。理解できないお客さんは寝る(笑)。

有識者
うん。音MADだとそこが難しいじゃないですか。

ユビュ
そこは自演コメするとか(笑)。まあ音MAD向けではないのはたしかですね。

リアリズムの話をガッツリしたけども音MADでリアリズムは難しい(結論)。